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株主・投資家の皆様へ

投資対象としてのMetaRealの意味
~AI翻訳の次に進むにあたって~

もし私たちが空想家だと言われるならば、
救い難い理想主義者だと言われるならば、
実現する可能性は低いと言われるならば、
何千回でも答えます。
その通りです。

世界中で新しいことに挑戦するプロジェクトは無数に存在し、
そのうちのほとんど全ては達成できないままに終わります。
たいていの場合は、不可能なことは不可能のままです。
それでもなお、不可能を可能に変えてきたのが人類の歴史です。

不可能を可能に変えてきた人類の歴史

「飛行機の実現には100万年かかる」
1903年10月9日、ニューヨーク・タイムズは "The Flying Machine and Its Possibilities "と題する社説を掲載しました。この記事の中で、パリ大学の教授である著者は、持続的な飛行が可能な機械というアイデアは「不条理」であり、その実現には100万年から1000万年かかると論じていました。
「初歩的な翼で出発した鳥を簡単に飛べるようにするのに1000年、翼がまったくない状態で出発し、最初に翼を生やさなければならなかった鳥に1万年かかるとすれば、本当に飛ぶ飛行機械は、数学者と機械学者の組み合わせと継続的努力によって、100万年から1000万年以内に進化する可能性があると仮定できる。もちろん、その間、無機材料の重量と強度の既存の関係のような小さな欠点や困惑を取り除くことができればのことだが」
ライト兄弟がキティホークで歴史的な初飛行に成功したのはその2か月後のことでした。

「真空の宇宙でロケットが飛ぶのは不可能」
1920年にアメリカの発明家ロバート・ゴダードは、液体燃料ロケットに関する画期的な論文を発表し、ロケットは真空の宇宙空間でも推進できると主張しました。
1920年1月13日のニューヨーク・タイムズ紙は、ゴダードの理論に対して懐疑的な立場をとり、真空中でのロケット推進についての彼の考えを批判しています。記事では、ゴダードがニュートンの第三法則(作用と反作用の法則)を理解していないと暗に示唆し、彼の理論を否定しました。
その後、1969年7月17日、アポロ11号が月に向かっている最中、ニューヨーク・タイムズは、ゴダードの理論に対する以前の批判について謝罪する記事を掲載しました。

「インターネット上でビジネスなど成り立たない」
インターネットもまた、初期では否定の声が圧倒的でした。
例を挙げると、アストロフィジクス学者としても知られるアメリカの作家・計算機専門家であるクリフォード・ストールは、1995年2月27日付のニューズウィーク誌で「インターネット?バカバカしい!(The Internet? Bah!)」というタイトルの記事を発表しました。この記事で彼は、インターネットが電子商取引や情報交換の効果的な手段として機能することに懐疑的な見解を示しました。
1998年6月に、ノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマンは、「インターネットの影響は、ファックスマシンを超えないだろう」という発言をしています。彼は当時、インターネットの経済への影響を過大評価されていると考えていました。
インターネットとイーサネットの父として知られるロバート・メトカーフは、1995年に、インターネットは「間もなく壮大な崩壊を迎える」と予測しました。彼は自身の予測が外れたことを認め、後に自らの言葉を食べるパフォーマンスを行いました。

「携帯電話の市場規模は90万人」
1980年代初頭、AT&Tは携帯電話の将来市場規模についてマッキンゼー・アンド・カンパニーに調査を依頼しました。当時、携帯電話は非常に高価で、通話品質も良くなく、大きくて重いものでした。これらの理由から、マッキンゼーは携帯電話の市場規模について極めて懐疑的な見積もりを行いました。彼らは2000年までにアメリカでの携帯電話の利用者数は90万人程度に達するだろうと予測していました。
それを受けたAT&Tは携帯電話事業を売却しました。
しかし、実際には携帯電話は急速に技術革新が進み、価格も低下し、通話品質が向上しました。結果として、2000年までにアメリカでの携帯電話の利用者数は1億人を超えました。

「iPhoneには市場がない」
当時マイクロソフトのCEOであったスティーブ・バルマーは、2007年に初代iPhoneが発表された際、「iPhoneには市場がない。これは高すぎる。そして、ビジネス顧客向けのアピールがない」と発言しました。彼はiPhoneがスマートフォン市場で大きな成功を収めることに懐疑的でした。
携帯電話市場でかつて圧倒的なシェアを持っていたノキアは、2007年に初代iPhoneが登場したとき、ノキアはiPhoneがスマートフォン市場を大きく変えるとは考えておらず、自社のSymbianプラットフォームに固執し続けました。しかし、その後の市場の推移は、ノキアのスマートフォン市場でのシェアが急速に低下し、最終的にはMicrosoftによる買収に至ることになりました。
Wired.comの2008年7月、「Why the Japanese Hate the iPhone」では、「ワンセグもおサイフケータイも赤外線通信もなく、防水非対応のiPhoneは、スペック要求の高い日本で売れない」としていました。
そもそも今ではビジネス界では神格化されているスティーブ・ジョブスは、iPhone発表以前に実績の伴わない夢想家として社長を解任されたこともありました。

賛成する人がほとんどいない大切な真実

シリコンバレーの生ける伝説として知られるピーター・ティールは著書「Zero to One」において、長期的に成功するには「賛成する人がほとんどいない大切な真実」を見つけることが最も重要だと言っています。
スティーブ・ジョブスの「Think Different」「Stay Foolish」と同意です。
イノベーションはいつも当初は多数の人には理解されません。
インターネットも当初は「便所の落書き」「一時の流行でやがて崩壊する」「ネット上でビジネスは成立しない」と言われていました。今では誰もが勝者と認めるAMAZONも当初は長々と赤字が続き将来性を危ぶむ声が多かった。Airbnbの民泊は誰も想像しなかったし、Uberのライド・シェアリングは違法でした。
豊田喜一郎が織機から自動車に事業転換した時も、ソニーがウォークマンを出した時も、当初は内部からも反対されました。

誰もが賛成する事業=ユーザーが多い
=誰もが参入
=レッドオーシャン
=差別化困難
=将来性厳しい

誰も賛成しない事業=ユーザーが少ない
=参入が少ない
=ブルーオーシャン
=差別化ができる
=将来大きな利益

以上が基本原理であり、長期的に成功するには、誰もが賛成することばかり追うのではなく、誰も賛成しないことを実現しなくてはならないというのが「Zero to One」の思想です。

当社の「Zero to One」

賛成する人がほとんどいないものを成し遂げるというのは、そのまま当社の歴史でもあります。

  1. 人間に代わって機械が翻訳できるようになると予測
    2004年のロゼッタ創業当初からやがて機械翻訳が人間に代わって翻訳する時代が来ると予想していたが、当時はGoogle翻訳でさえも品質が酷すぎて実用に程遠い時代で、誰も信じませんでした。
  2. インターネットのデータを使った統計的手法
    2004年創業当初からインターネットのデータを使って統計的に自動翻訳する手法を進め、対訳データを収集していた。当時はインターネットは便所の落書きと称され、データを活用して翻訳するという発想はほとんどの人から否定されました。まだ世には「ビッグデータ」という言葉さえ存在しませんでした。
  3. クラウド(SaaS)
    2006年にリリースしたロゼッタの最初の自動翻訳サービス『熟考』は、当初からクラウド(SaaS:当時は「ASP」と呼ばれていた)のサブスクリプションでした。当時はまだネットにつながるクラウドに対してセキュリティ面の心配から避ける日本企業の方が多かったが、当社はいずれクラウドが主流になると読んでいました。
  4. ディープラーニングによるAI翻訳
    プロ翻訳者と同等の精度に達した「T-4OO Ver2.0」はニューラルネット(ディープラーニング)技術によるものですが、当社が開発を始めた頃は、「ニューラルネットは画像認識のような単純なパターン認識には使えても翻訳のような複雑な思考はできない」と、日本では誰もが可能性を否定していました。
    Googleがニューラル翻訳で精度をあげた2016年9月直後の11月には元Google社員の評論家は自信満々の口調でこのように断言しました。「(当社が)ここからGoogle翻訳の精度に追いつくのは無理。今からはますます差が開く一方」だと。
    ロゼッタのT-400がGoogle翻訳の精度をはるかに超えてプロ翻訳者と同等にまで達したのは、その1年後2017年11月のことでした。
  5. 生成AIを先駆けて「デジタルクローン」
    2023年5月からメタリアルの最高技術責任者(CTO)として取締役に就任した米倉豪志は、2014年から生成AIの先駆けとなる「デジタルクローン」を開発していました。

このように「賛成する人がほとんどいない大切な真実」を見つけ出し、忍耐強く開発努力を続けてやがて実現していく能力(「Zero to One」力と呼びます)が、当社の競争力源泉として最も重要な要素です。

テクロノジーによるUXデザイン力

「御社の技術力はどう凄いのですか?」と質問されることがあります。
この質問に答える際には、まず、技術力とは何を指すか?を定義する必要があります。
たとえば、iPhoneはスマホという巨大なイノベーションを起こしたものとして技術力が凄かったという印象がありますが、実は当時、世界の携帯電話業界を制していた日本の企業の観点からは「何一つ、目新しい技術がない」製品でした。実際、技術的にいえば、iPhoneは既存技術の寄せ集めに過ぎませんでした。
iPhoneの革新性は、独自の技術力ではなく、従来の携帯電話やPDA(携帯情報端末)には無かった革新的なUX(ユーザー体験)を創造したところにありました。
AmazonもFacebookも同様です。一般的にハイテクの勝利と思われているほとんどの製品・サービスは技術力ではなくUXデザイン力による革新です。
このように既存のテクロノジーを組み合わせて革新的なUXを設計する力を「テクノロジーによるUXデザイン力」と呼びます。

2023年5月からメタリアルの最高技術責任者(CTO)として取締役に就任する米倉豪志は、この「テクロノジーによるUXデザイン力」に卓越しています。それが今後の当社にとって重要な競争力の源泉です。
米倉のUXデザイン力は、①「論文及び広範な人脈による日々の膨大な情報収集」、②「自身のエンジニアとしての技術的な知見や、クリエイターとしての広範な知識」、③「事業家としての知見」、これら3つの統合による、テクノロジーの社会需要の変遷の高い予測精度によるものです。
これから始まるAI事業においても、その先のメタバース事業においても、当社の最も重要な競争力の源泉となります。

Fail Fast(試行スピード)力

どんなに正しく時流を読んでも、どんなに良い商品をつくっても、個々の施策のすべてが成功するとは限りません。
想定できない、コントロールできない、複雑系の不確定要素が必ず入ってきます。

さらに、時代の変化も益々加速しています。今年に入ってからの時間の流れは去年までと次元が違います。体感的には数十倍速くなりました。
昔、時代の変化が速くなった現象を「ドッグイヤー」と呼びました。犬の寿命は10年。
さらに速くなったら「マウスイヤー」と呼びました。マウスの寿命は1年。
私は今年からの速度は「ウイルスイヤー」だと感じています。ウイルスの寿命は短ければ数時間、長くて数週間。生きているとも死んでいるともいえないような刹那の生物でありながら、急速に変異を起こしながら拡散する。
今年からはそういう時代です。

あらかじめほとんどの施策は思い通りにはいかないことを前提として、いかに仮説と実験を大量かつ高速にループしていくかは、ますます重要な競争力要素となります。
数多くの試行を「失敗」ではなく、「実験と学び」として「成功へのプロセス」ととらえる考え方は「Fail Fast」と呼ばれます。
「Fail Fast」の方針では、新たなアイデアを片っ端から試します。
それらの試みのほとんどは成功しませんが、そのうちの少数は大きな成功につながります。
当社は、多くの試行をスピーディに実施するのが成功の最も確率の高い方法であると信じています。
多くの試行錯誤をかなり高速なスピード感で行っています。
これが重要な競争力の源泉であると考えています。

以上3点が当社の特徴であり、存在意義であり、競争力の源泉です。

当社のミッション

当社のミッションは以下の4段階です。
第1章 我が国を言語的ハンディキャップの呪縛から解放する(MT事業)
第2章 人類を単純作業の苦役的労働から解放する(AI事業)
第3章 人類を身体機能の限界から解放する(xR事業)
第4章 人類を物質世界から解放する(HA事業)

現在は、短中期の成長戦略として第2章を、10年±5年を見据えた長期成長戦略として第3章に取り組んでいます。

実現可能性

最後に、当社が目標とするミッションの実現可能性の問題です。
「GAFAを始めとして世界中に強力な企業があるなかで、当社のような弱小企業に勝ち目があるのか?」という問いです。
これには2段階で答えます。

第1に、世界中の巨大な企業に比べて当社はあまりに非力なのは厳然たる事実です。
だからそれらの巨大企業には人気が集中し時価総額も莫大になっています。
市場が十分に顕在化し人気が集中する事業領域はユーザーも参入者も多くレッドオーシャンになるのと同じ様に、トップランクの人気企業は株価が高い。名もなく実績も小さい企業はそれ相応に株価も低い。人気と株価が比例します。
世界のトップ企業の時価総額は100兆円であるのに対し、当社はその1万分の1程度にすぎません。
その代わり、小物であればあるほど、当たった時はリターンの上振れ倍率が大きいですね。サッカーや競馬の賭けと同じです。賭けが集中する候補は当たった時のリターンの倍率が低く、人気がない候補は倍率が高い。
そういう意味で、まさしく当社は世界のトップ企業と比べれば大穴です。その代わり、当たった時のリターン倍率が高い。夢が大きい。
当社が現状1万倍の規模である世界のトップ企業群を追い越せるかというと非現実に思えますが、問題はそこではありません。現状が1万分の1だとすれば、わずか1万分の1増えれば2倍、1万分の9増えれば10倍、1万分の99増えれば100倍・・ということです。そのように考えればリターンの勝算は十分にあると思えませんか?
人と同じことをやっていたら人と同じことしか得られません。
巨大になった企業の株を初期から持っていたら何倍になっていたかという話題がよくありますが、投資先としての当社の位置づけはそういうこと、確実性よりもリターン倍率の大きさということだと思います。

第2に、GAFAも最初は無名のガレージベンチャーだったということです。企業の歴史上もやはり、盛者必衰、諸行無常の理は真実なのです。プレイヤーの入れ替わりは、たまたまの偶然ではなく、イノベーションのジレンマとして広く知られているように必然の法則です。
今現在私たちが無名で非力な持たざる者であることは成長可能性を否定する理由にはならず、イノベーションの観点からはむしろ優位に働きます。

当社が「賛成する人がほとんどいない大切な真実」を見つけて困難なイノベーションを実現しようとする企業であるのと同様に、投資家の観点からは、あえて賛成する人がほとんどいない当社の株主となって、その他大勢の人とは違う、並外れて大きな夢を共にみたいかどうかということだと思います。
そうして当社を選んでいただいた株主の方といっしょに未来を共創したいと思います。

2023年6月6日
代表取締役 CEO
五石 順一

上場時の挨拶

株式会社メタリアルは、2015年11月19日をもちまして、東京証券取引所マザーズに株式を上場いたしました。
ここに謹んでご報告申し上げますとともに、皆様のご支援、ご高配に心より感謝申し上げます。
当社は、2004年の創業以来、機械翻訳の研究開発に取り組んで参りました。
まだまだ発展途上ではありますが、10年後の2025年には人間に代わって機械が翻訳をする自動翻訳機を完成し、「我が国を言語的ハンディキャップの呪縛から解放する」ことをミッションとしています。

当社は、すべての投資家の方々からくまなく関心を持たれる会社ではないかもしれません。
来年、再来年の短期で企業規模を10倍、20倍に成長させるというようなことはコミットできません。
当社はそのような目先での急成長を望む方々の期待には応えることができないかもしれません。

しかしながら、私どもには夢があります。
いつの日か、日本が英語の重たい足枷から解放されることを。
私どもには夢があります。
いつの日か、英語が話せないことが理由で、昇格できなかったり、リストラされたりしない世の中がくることを。
私どもには夢があります。
いつの日か、言語のハンディキャップが消えて、日本人が世界と対等のステージで、自由に羽ばたける時代がくることを。
私どもは、このような夢の実現のため、全社員一丸となって全身全霊の熱意をもって業務に取り組んでいます。

この夢に賛同してくださる方々。
日本が英語から解放される日を待ち望む方々。
株式会社メタリアルは皆様の会社です。
このたび上場いたしましたが、まだまだ非力な会社です。
ミッション遂行のためには、もっともっと大きな力が必要です。
想いを共にする投資家の皆様、力を合わせて一緒に新しい日本の未来を創りませんか。
是非とも皆様方からのお力添え、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

2015年11月19日
代表取締役
五石 順一

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