経営幹部インタビュー 古谷 祐一
Executive interview
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製薬AI「ラクヤクAI」で新薬上市の早期化の貢献へ。
起業経験を活かし、社会変革につながるビジネスの実現を目指すCOO
株式会社ロゼッタ 取締役
ラクヤクカンパニー COO
(Chief Operating Officer:最高執行責任者)
古谷 祐一(ふるや・ゆういち)
所属部署などは取材当時の情報を記載しています
プロフィール
2007年にGMOインターネットグループ連結子会社「GMOスピード翻訳株式会社」の社長に就任。スピード翻訳株式会社、Xtra株式会社での社長経験を経て、2017年11月より株式会社ロゼッタへ。その後はアライアンス事業部長やMT事業部長などの要職を経て取締役に就任。現在はラクヤクAIカンパニーのCOOとして、製薬業界向けの新規事業に携わっている。また、2012年から10年間、日本翻訳連盟(JTF)で理事を経験。2014年からはアジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)監事としても活動中。
添乗員から翻訳事業を起業。
時代の転換期を乗り越えて
古谷さんは30歳で起業されているのですね。
どのような経緯で起業されたのですか?
旅行会社の添乗員として様々な経験を積んでいた25歳の頃に、日本経済新聞である記事を読んだことがきっかけでした。「中小企業の倒産件数 1万社突破」という見出しを見たとき、社長だけでなくその家族や従業員に至るまで、生活が立ち行かなくなり、将来への不安が増していくのではないかと感じました。その瞬間、私には果たすべき役割があると強く意識したのを覚えています。 自分が動くことで、一社でも多くの企業が倒産せずに済むような機会を生み出せないだろうか。そう考えるようになりました。
私自身、決して裕福な家庭に育ったわけではなく、むしろ人一倍ハングリー精神がありました。できるだけ早く社会に出て、自分の力で稼ぎ、家庭を支えたい――そんな気持ちが常にありました。そうした背景があったからこそ、新聞の一面のニュースをただ読み流すのではなく、自分の人生をかけて向き合うべき課題として受け止めることができたのだと思います。
その後、幾つかのIT企業を転々とした後、不動産会社で新規事業の立ち上げに携わりました。その事業の中で韓国のITベンチャー企業と出会い、業務提携を通じて日本におけるWeb制作事業と翻訳クラウドソーシング事業を展開することになったのです。
クラウドソーシング翻訳とは、24時間365日いつでもWebサイトから翻訳依頼を受け付け、登録翻訳者が迅速に対応する仕組みです。日本企業が海外で戦うための「翻訳インフラ」を整備する――そのミッションを掲げ、事業をスタートさせました。
やがて、その取り組みがGMOインターネットの目に留まり、「おもしろい事業をやっているね」と声をかけていただきました。設立の背景や思いを熱く語ったところ、資本参加を打診され、30歳のときに連結子会社「GlobalWeb株式会社(後にGMOスピード翻訳株式会社に社名変更)」が誕生しました。
そこからどのような経緯で、
株式会社ロゼッタと
つながっていったのでしょうか?
実は、翻訳業界にとって忘れられない新技術の登場がきっかけでした。2016年、ちょうど2007年に会社を立ち上げてから9年目のこと。今までほとんど使い物にならないとされていた機械翻訳の精度が、Googleが開発した人工知能の技術によって急激に向上したんです。その結果、あっという間にクラウドソーシング翻訳事業の売上が3割減少。今までは売上が下がってもすぐに対策を打てば乗り越えられたのですが、今回は一過性のものではありませんでした。
親会社からは「これ以上の投資は難しい」という判断が下され、私としても「クラウドソーシング翻訳から、機械翻訳へ転換するしかないか」と考え始めていました。そのタイミングで、奇跡的にロゼッタ(現 株式会社メタリアル)の創業者である五石さんに出会ったんです。
五石さんに出会ったことが、
何か運命的なものを感じさせますね。
そうですね。五石さんと初めて出会ったのは、経営者交流会の場でした。ほんの短い挨拶を交わしただけで、その時点では特別な印象を残すこともなく、時間は流れていきました。ところが後日、親会社の社長から「GMOスピード翻訳を買収したいという会社がある」と知らされたのです。胸の奥でざわめくものを感じつつ、どこの会社だろうと耳を傾けました。
そして判明した名前は――ロゼッタ。まさに、あの交流会で出会った五石さんが率いる会社でした。その瞬間、「すべてはつながっていたのか」と思わず息をのんだのを今でもはっきり覚えています。まるで運命に導かれるような出会いでした。
ちょうどその時、ロゼッタは強力な機械翻訳エンジン「T-400」を持っており、本格的に機械翻訳に乗り換えるには絶好のチャンスだと思いました。当時、すでに五石さんは「日本を言語的ハンディキャップの呪縛から解放したい」という強烈なミッションを持っていて、その言葉に心から感動し、共感しましたね。
「ラクヤクAI」を通じて、
広く社会に貢献していきたい
今までのキャリアの中で、
現在の仕事に役立っている
経験・スキルはありますか?
経営者として培ってきたスキルや経験が、最も役立っています。ゼロイチでさまざまなサービスを立ち上げる中で、事業戦略の策定や業務判断をするために必要なスキルが身につきました。
例えばロゼッタに参画した当初に担当した、アライアンス事業の立ち上げに役立ちましたし、現在も手がけている製薬業界向けの生成AIソリューション立ち上げ事業にもダイレクトに活かされていると思います。
GMOインターネットグループにいた時に学んだ経営理念や、培ってきたマインドを言語化した「スピリットベンチャー宣言」も、現在の意思決定や価値判断の基盤になっていますね。組織規模が大きくなっていくと、やはり理念・ミッションの浸透は非常に重要ですから。
現在、担当されている「ラクヤクAI」事業が急成長しているとお聞きしました。
詳しい内容について教えてください。
メタリアルは2021年にロゼッタから社名変更し、長年培ってきた「翻訳AI技術」を基盤にした「Metareal AIプロジェクト」を展開中です。私はその中の製薬企業向けAI「ラクヤクAI」事業の責任者として、製薬業界に特化したAIソリューションを提供しています。
ラクヤクAIは、創薬プロセスにおける「承認申請と審査」を中心とした領域を対象とし、膨大なドキュメント作成における非効率を解消して、整合性・正確性の強化に貢献するサービスを提供する「業界特化型AI」です。ChatGPTなどの汎用型AIとは異なり、専門性の高い分野に応じたソリューション開発を行っています。この夏には、製薬業界でのグローバル大手企業との採用も決定し、製薬業界内での取引拡大を進めているところです。
特に製薬業界は、命に関わる仕事です。生産プロセスの手順を1つでも間違えたり、生産ラインに何かが混入したりするだけでもアウトになります。
そのためにも新薬開発には、膨大なドキュメント作成や管理が必要なんです。私たちが提供するソリューションによって、そうした工程が効率化されれば、創薬のスピードも早まりますよね。
具体的には2024年から国立がん研究センター中央病院と共同で「治験関連文書自動作成」に関する研究を進めています。自動生成ツールを導入した結果、これまで半年以上・1件500万円以上かかっていた作業コストが大幅に削減されました。
1年でも短縮できれば、製薬会社の業績にも貢献できますし、何より患者さんにいち早く薬をお届けできる。ラクヤクAIは、AIを活用して製薬業界のドキュメント作成における非効率を解消し、「新薬上市の早期化」に貢献することにより、社会と市場に大きな価値を生み出すことをミッションに掲げて成長を続けています。まさに、社会的価値の高い事業を展開していると自負しています。
ミッションを拡張しながら、
進化を続けていく
現在、メタリアル・グループは組織として
大きな変革期にあります。
以前と比べて、どのような点が
変わったと感じていますか?
以前の「翻訳会社」というイメージから脱却し、AIソリューションカンパニーへと進化してきたと感じています。生成AIの台頭によって、翻訳に限らず幅広い支援ができるようになりました。
メタリアル・グループが掲げているミッションの第1章は「我が国を言語的ハンディキャップの呪縛から解放する」です。ロゼッタ時代からもそのミッションは変わらず、今は第二章「人類を単純作業の苦役的労働から解放する」へと引き継がれています。まさにピボット(方向転換)が行われたわけですが、ミッションそのものは変わっていません。
将来的にはメタバースカンパニーへと変わっていくでしょう。今後はメタバースと現実社会が融合していく時代になっていきます。そうした時代の流れの中でも、理念・ミッションは変えずに進んでいくのではないでしょうか。
変革よりも「拡張」という言葉がフィットしそうです。企業ミッションを達成するための「覚悟」は、以前から変わらないのかもしれません。
そうですね。2015年に株式会社ロゼッタが上場した時に、代表の五石さんが語っていた言葉を思い出します。
「当社は、すべての投資家の皆さんから関心を持たれるような会社ではないと思います。来年、再来年は10倍、20倍の企業規模へと成長させるぞ──そういうコミットメントはできません。超短期的な成長を求められても、期待に応えられないかもしれません。
しかしながら、私どもには夢があります。いつの日か、日本人が言語のハンディから解放されると。私どもには夢があります。いつの日か日本人が、言語ができないという理由で昇格できなかったり、リストラされたりすることのない世の中がやってくるという夢。私どもには夢があります。いつの日か、言語のハンディキャップが消えて、日本人が世界と対等のステージで、自由に羽ばたける時代が来ると。そういう夢があります。こういう夢に賛同してくださる方、共有してくださる方々がいると思います。株式会社ロゼッタは、皆様の会社です」と言ったんです。
この言葉に、すごく心が熱くなって。私自身の心の奥にあった「翻訳インフラを作りたい」という想いと完全に重なるものを感じました。ミッションと向き合う姿勢は、今も同じだと思います。
大きな夢の実現に、
ワクワクしながら向き合いたい
最後に、候補者への
メッセージをお願いします。
やっぱり一緒に働きたいのは、メタリアル・グループが掲げる大きなミッションに、心から共感してくださる方です。経験や学歴は問いません。ミッション遂行に一生懸命になれる方ですね。創薬にかかる期間を1日でも早めて、世の中に薬を届けたいと思う方と一緒に、仕事がしたいと思っています。
目の前の課題をこなすだけではなく、大きな夢にワクワクしながら、実現に向けて近づいていく。そのプロセスを前向きに楽しみ、チャンスだと思える方と、大きな価値を生み出してみたいです。
生成AIをはじめとする先端技術は、まだまだ発展途上。正解のない領域へ、ともに挑んでいきましょう!